この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
相談者の父親が亡くなったあと、故人が晩年に再婚した女性に「全財産を相続する」という遺言があることがわかりました。このため、遺留分を請求する旨の通知書を送って交渉を始めましたが、交渉の途中で先方が故人の自宅の名義を自分に移転し、さらに自分の知人である不動産業者に「売買」という名目で名義を再度移転してしまいました。そのとたん、先方は「お金は一切支払えない」と言い始めました。
解決への流れ
ご相談をお受けした後、直ちに故人のご自宅の登記名義の移転を禁止する仮処分命令の申立をおこないました。遺留分の割合である4分の1について、所有名義の(再)移転などの処分をおこなってはいけない、という内容です。名義の移転先となった業者の代表者が再婚相手の知人であったうえ、相談者による遺留分の請求についても知っていたことから、仮処分の申立が認められました。裁判所の命令で処分が禁止されたのは4分の1についてだけですが、一部にせよ仮処分の登記がなされたことによって、故人の不動産を売却することが不可能になりました。その後、先方との間で交渉をおこない、2か月後、遺留分の評価額に相当する金銭を全額受け取り、仮処分の申立を取り下げました。
遺留分の請求の事案では、先方が遺産の名義を故人から自分に移転したうえで遺産を処分してしまう危険を常に伴います。その場合は代償金を請求することになりますが、お金を隠されてしまうと、たとえ遺留分があっても何も受け取れなくなってしまうことになりかねません。そうならないためにも、迅速な仮処分の申立をおこなうことが有効な対抗手段となります。ご相談のケースのように、それが早期解決の鍵となるケースも多くあります。ただ、一口に「遺留分請求」といっても状況は千差万別で、いつ、どのような動きを起こすかの見極めは弁護士にとってもそう簡単ではありません。ここは弁護士としての経験がものをいってくるところだと思います。