この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
相談者の母は7年前に亡くなりましたが、遺言書はなく、子ども3人は遺産分割協議もしないままでした。相談者は遺産である実家土地建物に住んでいるので、そろそろ相続登記をしなければと思い、母の葬儀以来会っていなかった姉と妹に電話をかけて、「自分が長男だし、実家土地建物を取得したい」「預貯金はきょうだい3人で3等分しよう」と伝えました。姉も妹も快諾してくれたので、相談者が司法書士に頼んで遺産分割協議書を作り、姉と妹に送ったところ、姉はすぐに署名押印をして印鑑登録証明書を添えて返送してくれましたが、妹からは署名押印のないままの遺産分割協議書が返送されてきて、まもなく連絡が取れなくなりました。司法書士も「これ以上は関わることができない」と手を引いてしまい、相談者は途方に暮れています。
解決への流れ
相談者からの依頼を受けて妹に弁護士名で手紙を送りましたが、やはり返事はなく、電話にも出てくれません。そこで、妹の住まいの近くの家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることにしました。遠方の裁判所でも電話会議方式やオンライン方式での調停期日が開かれますので、相談者も不安はありません。2か月後、裁判所からの呼出状や書記官からの電話連絡を受けて、妹からようやく応答があり、「遺産分割に異議はないが、今までの家族関係における不満から、手続きに協力するのは嫌だ」という本心がわかりました。そこで裁判所に「調停に代わる審判」という判断を示してもらい、妹からも異議が出なかったので、無事に審判が確定し、遺産分割を済ませることができました。
きょうだいからの連絡には応答してくれない相続人でも、裁判所から連絡が来るとさすがに無視はできないものです。また、期日に出頭しない当事者がいる場合に活用できる「調停に代わる審判」という手続きもあります。相続のお悩みで行き詰ったら、1人で考え込まずにまずは弁護士に相談にいくとよいでしょう。きっとよい解決方法が見つかります。