この事例の依頼主
40代 男性
神奈川県に在住の40代のSさんの叔父と叔母は、子供がおらずSさんとその兄弟が相続人になっていました。叔父は6年前に亡くなりましたが、相続のことについては叔母に任せて何もタッチしていませんでした。そうしたところ、叔母も心筋梗塞で急逝してしまいました。Sさんは、叔父と叔母がある程度資産を持っている人であったため、きちんと相続処理をしなければならないと蓋をあけてみたところ、叔母は相続の手続きについて何もしておりませんでした。Sさんの兄弟であるWさんとは音信不通で10年以上、連絡をとっていませんでしたが、叔母に遺産があることがわかるとSさんに対して自分の取り分を早く寄こせというようにしつこく連絡をしてくるようになりました。その中でSさんとWさんの中で感情的な確執が生じ、話し合いをすることが困難になってしまいました。Sさんとしては、今後何をしてよいのかわからなかったことから、専門家の意見を聞こうということで当職のところに相談に来られました。
本件のように、亡くなった人(叔父)の相続手続きが終わる前にその相続人(叔母)が亡くなってしまうことを「数次相続」と言います。この場合には、まず、叔父の相続手続きを済ましてから、次の叔母の相続手続きをすることになりますが、遺産分割協議をする場合には、2回分の相続人の全員が参加することで一度で終わらせることができます。そのため、相続人はSさんとWさんしかいなかったため、当職は、Wさんに遺産分割協議を持ちかけました。Wさんは、最初は弁護士を入れた形で話合いをすると丸めこまれて、Wさんに不利な解決になるのではないかと疑っていましたが、財産をすべて開示し、法律上の処理の仕方を丁寧に説明をしたところ、当職を信用してくれて任意の遺産分割に協力してくれることになりました。そうしているところ、叔母の遺産を整理していたところ、叔母の遺言が見つかりました。法定相続分通りにお互いに喧嘩することなく、平等にSさんとWさんで1/2ずつ遺産を分けてくれというものでした。SさんとWさんとの間には長い間の音信不通の期間や感情的な確執から話し合いをすることは困難でしたが、当職が間に入ることで、遺産分割協議書を取り交わすことができ、スムーズに遺産分割を進めることができました。結果として、SさんとWさんはそれぞれ2000万円近くの相続をすることができました。
遺産分割は親族間の争いになることが多く、身近な人間との争いであることから紛争が感情論に展開しがちです。重要なのは感情論を排して、どう冷静に公平に話をすることができるかだと思います。当事者同士で話をすることになると、どうしても自分のエゴが前に出てしまったり、無理な主張をしてしまいがちです。共同相続人の間に法律の専門家を入れることで、話し合いがスムーズにいくことは多いですし、最終的に法的観点からどのような遺産分割のあり方が公平であるかということもアドバイスをすることができます。当事者同士では話せないことでも弁護士を入れることで話がスムーズにいくことが多いわけですから、まずは、弁護士に相談をすることが必要であると思います。