この事例の依頼主
30代 男性
Xさんは、前職のサービス業を辞めて、従業員が20人程度の貿易会社A社に入社しました。英語の能力を活かせると考えてステップアップのための転職活動でした。ところが、入社する前には、月額35万円の給与という話でしたが、入社後、試用期間中は月額30万円からのスタートである旨を伝えられ、入社早々、不安を覚えていました。試用期間が当初3カ月間あるということは聞いていましたが、「仕事の能力をもう少し見極めたい」ということで試用期間を半年にすると一方的に宣告されてXさんとしては受け入れざるを得ない状況でした。入社して5カ月たったころに、人事担当の執行役員に呼び出されて、「会社経営上の都合で解雇をさせてもらう」という通告を受けました。Xさんは、家族がいたので、「いきなりクビになるのは困る。不当な解雇ではないか」と訴えましたが、「試用期間中であるから解雇ではない。会社は自由に辞めてもらうことができる」と述べて一方的に解雇の手続きを進められてしまいました。
Xさんは、インターネット上で不当解雇について調べたところ、当職のページを見つけて無料法律相談にお越しになられました。当職は、会社側の解雇は全く根拠を欠く不当解雇であると考えていましたので、争った方がよいということでアドバイスをし、Xさんの代理人に就任いたしました。当職から相手方の会社に「内容証明郵便」を発送すると、会社側は弁護士を立ててきました。さすがに相手方の弁護士も不当解雇であると考えたのか、当初の約束の月額給与の2カ月分である70万円を支払う意思を示してきました。当職の見立てでは、5~6カ月程度の解決金を得ることが出来ると考えていたので、相手方の弁護士からの要求を拒絶し、交渉決裂させて、労働審判を申し立てることにしました。そうしたところ、東京地方裁判所における労働審判の第1回期日において、労働審判委員会から明らかに不当解雇であるが、会社に戻るのは難しいと思われるため、解決金として4カ月を支払うということで合意退職をしてはどうかという話がありました。「明らかな不当解雇である」というのであれば、4か月分では受け入れられないと突っぱねたところ、会社側としては訴訟になることを恐れたのか、当初の約束の給与の6カ月分の210万円の金銭を支払うということで和解を成立させることができました。
今回の解決のポイントは、会社側からの理不尽な主張に屈することなく、「解雇理由通知書」を会社に発行させたこと、あとは、相手方代理人が提示した交渉の際の目先の解決金に飛びつかなかったことです。裁判所では、解雇が無効か有効かという判断は比較的容易にしますが、解雇の意思表示の認定については、かなり慎重に判断をします。解雇無効の場合の解決金ですが、労働審判では事情に応じて給料の2~6カ月分が相場と思われます。