犯罪・刑事事件の解決事例
#不当解雇

(せっかく正社員になれたのに)試用期間満了後の本採用の拒否

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

20代 男性

相談前の状況

Aさんは、大学を卒業した後、4年間、出版社の営業職を経験した後、現在の会社(外食会社)に転職し、いわゆる正社員(期限の定めのない労働契約)として勤務し始めました。ところが、勤務開始から2カ月くらい経った頃、Aさんは、突然、上司に呼び出されて「試用期間満了で契約を打ち切りにさせて欲しい」という話をされ、書面を手渡されました。その書面には、①試用期間が満了する日をもって雇用契約を終了すること、②雇用契約打ち切りの理由はAさんの能力不足によるものであると書いてありました。会社の就業規則には3か月の試用期間があるという定めがあり、採用の面接の際にAさんも面接担当官からそのような説明を受けておりました。ただ、上司からの一方的な契約終了にはAさんは納得がいかなかったため、Aさんは上司にきちんとした説明を求めましたが、まとも取り合ってくれませんでした。Aさんとしては勤務態度に問題があるという認識は全くありませんでした。そこで、Aさんは、このような会社の対応に対してどのように対応をしたらよいのかアドバイスをもらうため、当職のところに無料法律相談に来ました。相談の結果、当職の見立ては以下のようなものでした。(1)Aさんは、試用期間が満了した後の本採用を拒否されているが、これは法律上解雇にあたる(2)解雇は、労働契約法上「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(解雇権濫用の法理)には無効である。(3)ただ、試用期間中の解雇は通常の解雇よりも広く認められる。(4)Aさんの解雇理由の有効無効を判断するためには、手渡された書面に記載だけではわからないので、会社側に具体的な解雇理由を明らかにしてもらう必要がある。(5)相談段階の事情からすれば、Aさんに到底、解雇理由があるとは考えづらい。不当解雇として争う余地は十分あるというものでした。

解決への流れ

Aさんは、解雇には納得いかず、やっと見つかった正社員の仕事なので職場に戻りたいとの希望でした。そこで、まずは、法的措置を講じるのは待って、会社との交渉について当職が受任することになりました。当職は、会社に対して内容証明(受任通知)を送付し、Aさんの解雇事由について具体的に明らかにしてもらいたいという旨の文書を送りました。そうしたところ、会社からは、以下の内容の解雇理由を記載した解雇理由書が送られてきました。(1)Aさんが勤務中に頻繁に私的なLINEのやり取りをしていたこと、(2)出勤について遅刻が複数回あったこと、(3)上司の指示に従わなかったこと等の理由が記載された「解雇理由書」が送られてきました。Aさんに会社側が指摘する解雇事由について確かめてみたところ、(1)業務中に友人からLINEでの連絡があり、携帯電話を確認していて注意されたことがあるものの、それ以降勤務中は、LINEのやり取りをしないようにしていること(2)遅刻したことがあるが、1度だけであったこと(3)仕事の進め方について、考え方の対立はあったのもの、最終的には、上司の指示に従っていたことが判明しました。そこで、当職は、Aさんから聴取した事実関係をもとにすれば、「正当な解雇事由はなく、本採用拒否は無効であるので、復職することを求める」と言う内容の書面を再度送付しました。ところが、会社側は、正当な解雇事由であると考えている、Aさんの復職に応じるつもりは一切ないとの回答を送ってきました。会社が話合いに応じる姿勢を一切見せないため、当職は東京地方裁判所に労働審判を申し立てることを勧め、Aさんも会社側の不誠実な対応は許すことが出来ないということで徹底的に争って欲しいとのことでした。労働審判の1回目の期日にAさんは弁護士とともに本採用拒否に関するこれまでの経緯を裁判官らに伝えました。会社側には、労働審判期日の直前に代理人弁護士がついたようしたが、当初から会社が主張している事実をそのまま主張するだけでした。そうしたところ、労働審判委員会から本件については、解雇事由をめぐる事実関係に食い違いがあるけれども、解雇権濫用の法理に照らして解雇を有効と判断するのは困難であること、Aさんが会社に復職することは、ここまでの紛争になってしまった以上は、現実的ではない面があることの指摘をされました。その上で、「解決金を支払って和解することはできないか」との和解の提案がありました。Aさんとしては、あくまで正社員として復職をしたいという希望があったため、次回までに双方が話合いでの解決の可能性と解決金による解決の場合の金額について検討するということで、1回目は終了しました。後日、弁護士がAさんと打ち合わせを行うと、本件がこれ以上長引くのは精神的によくないし、会社側の対応はあまりにもひどいので、そのような会社に復職する意思はもうないという意向を受けました。むしろ、半年分程度のまとまった解決金を払ってもらって労働審判を早く終わらせたい、との話でした。2回目の期日、会社側から4カ月分の解決金提示がありましたが、当職としては半年分を提示し、受け入れてくれないのであれば、審判を出して欲しいと伝え席を立ちました。そうしたところ、裁判所が強く会社側を説得してくれ、結果として、給料の6ヶ月分の解決金を支払ってもらうことで話合いでの解決を図ることができました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

試用期間であれば、「お試し採用であるから気に入らなければ本採用にしなくてもいい」という間違った考え方をしている会社が多くあります。試用期間から本採用にするにあたっても、合理的な理由がなければ解雇権濫用の法理の適用になり、無効になるわけです。会社側の一方的な本採用拒否については、断固として戦いましょう。