犯罪・刑事事件の解決事例
#建物明け渡し・立ち退き

【立退料事例(賃借人側)】裁判上の和解で立ち退き料として1300万円を獲得した中華料理屋さんの事例

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

依頼者の方は、Aさんといってビルのテナント(以下「本件ビル」という。)で、中華料理屋さんを10年ほど営んでいる社長さんでした。本件ビルの更新を半年後に控えていた際に、本件ビルのオーナーから本件ビルが老朽化したので、立て替えようと思っている旨を告げられました。Aさんとしては、中華料理屋は、ビジネスマンがランチに利用してくれたり、また、地域の住民の方はディナーでも使ってくれており、その場所を移動することで売上が下がることをとても懸念しておりました。テナントから3kmほど離れたところに良い空き物件がありましたが、新たに店の内装を作り直したり、新たに賃貸借契約を締結するとなると、900万円程度の資金が必要になるということがわかりました。さらに、3km離れると商圏が異なることから売上げが下がることをとても心配しておられました。そこで、何とか最低900万円は補償をしてもらえないかと当職の事務所に相談に来ました。

解決への流れ

当職としては、Aさんの代理人として、オーナーと交渉をすることにしました。オーナー側は、本件ビルの「建替え計画」を進めていたことから、当職は、オーナーに対して「Aさんの中華料理店が立ち退かないということになれば、ビルの立替計画に大きな支障が生じることになるのではないか?立ち退き料を支払って和解をした方がいいと思う」という旨を説いて、オーナーに対して新しい店舗を出すのに必要な金額である900万円は最低限、補償してあげるべきではないかと言う話”をしました。「900万円出してくれれば、何とか当職がAさんを説得するし、Aさんとしても変にゴネ足りはしないと思う」と伝え、交渉による解決の重要性を説きました。ところが、オーナー側は、900万円の立退き料を不当と感じたのか、一方的に当職との交渉を打ち切り、弁護士を付けて建物明渡請求訴訟を提起してきました。当方としては、訴訟の前に交渉で解決するのであれば、900万円の補償をしてくれれば良いかと思っておりましたが、訴訟になるのであれば、新しい店舗を出すのに必要な資金だけではなく、営業補償についてもきちんと主張し、適正な立ち退き料を支払ってもらうべく徹底的に争うことにしました。当方は、訴訟の中で新規店舗を出す際にかかる費用や営業損失等の見込みを決算書などを用いて主張・立証しました。審理の経過において、裁判所からは1350万円の和解案の提案がありましたが、最初は、オーナー側は受け入れませんでした。当方としては、裁判所が判決にて判断を下したとしても、実際にAさんのお店が当該建物から退去しなければ、オーナー側は、建替えを行うことができませんので、地方裁判所が仮に、「明渡しを認める判決」を下したとしても、Aさんとしては高等裁判所に対し控訴する意向であること、そして、仮に、高等医裁判所において、控訴等が棄却されたとしても、上告をすること意向であること、さらに、仮に判決が確定したとしても、テナントが当該建物の明渡しに応じなければ、オーナーとしてはさらに明渡しにつき強制執行の手続きを行わなければならず、任意に出て行くつもりはないことを主張しました。それほど、Aさんにとっては、愛着のあるお店であったわけです。こうなると、オーナー側としては、テナント(中華料理屋)を本件ビルから退去させるにはさらに時間を要します。それを回避する方法としては、オーナー側として、立退料の金額、明渡時期等で譲歩して、和解による解決を図ることが望ましいのではと伝えて、和解をしないのであれば、最後まで粘り強く争う旨を伝えたところ、オーナー側は、根気負けをしたのか、裁判所の和解案から50万円を差し引いた1300万円の和解案を受け入れてくれました。さらに、立ち退きをするにしても、新たな店を出すには、4カ月は準備期間が必要であったことから、明渡しも4カ月後にしてもらうことにしました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

本件では、最初の交渉の時点で900万円を補償していれば、オーナー側としても、その負担だけで済んだにもかかわらず、訴訟を提起するなどして対決姿勢を示してしまったのが、オーナー側のミスだと思います。当方としても、今までテナントとしてオーナー側にはお世話になっていたことから、かなりの大幅な譲歩をしたつもりでした。結局は、450万円も多く持ち出しをしなければならなくなったわけですし、明渡しも遅くなってしまったことから、今回の訴訟は、オーナー側の判断ミスだと思われます。立ち退き料の問題については、きちんと、見立てができる弁護士に依頼をしてどのように話を進めるかを決めるのが重要であるということが分かる事案でした。