犯罪・刑事事件の解決事例
#建物明け渡し・立ち退き

【立退料事例(賃借人側)】ネイルサロンの立ち退き料として、870万円を獲得した事例について

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

30代 女性

相談前の状況

依頼者の方は、東京都渋谷区の中高層のビルが立ち並ぶ地域にある鉄筋コンクリート造7階建ての2階部分、約80㎡の半分程度のスペースを利用して、年間約1300万円を超える売上げのネイルサロン店を経営していました。そんな折、ビルの管理会社からビルが著しく老朽化をしておりビルを建て変えなければ、ビルの倒壊の危険があるとして、貸主の代理人弁護士から立退きを求める内容証明が届きました。それから、当職の事務所に相談にお越しになり、当職が代理人として就任をすることになりました。当職とビルのオーナーの代理人とで立ち退き料についての金額が折り合わず(先方提示300万円)、最終的には訴訟になったという事案です。

解決への流れ

本件は、建物明渡請求訴訟に発展しましたが、第1審において、裁判所が870万円の立退料を認めたことから、控訴審における和解で800万円の立ち退き料を支払うことで退去をするという和解が成立しました。裁判所は、貸主側に有利な事情として、以下の事実を認定しました。①ビルは実際に倒壊の危険があり、耐震補強工事をするにしても補修費用がとても高額であること本件建物は、築50年を超える古いビルで、仮に、震度5強以上の地震が発生した場合には、基礎にひび割れが生じるなどの危険があり、場合によってはビルが倒壊する危険もある状況でした。また、耐震補強をするための補修工事をするためには、建替え費用と同じくらいの多額の費用が必要になる状況でした。老朽化は、多くの下級審の裁判例でも貸主側の事情として検討されており、立退きの可否の判断では、非常に重視されている判断要素の一つです。② 建物の取り壊し後の「再開発計画」が具体的かつ合理的であったこと今回のビルのオーナーは、本件ビルを購入した後、すぐにテナントに対して立ち退きを求めるべく、弁護士に依頼をして立ち退き交渉を進めました。当初から、本件ビルを壊して、新しいビルを建築をする目的で本件ビルと敷地を購入したようです。本件ビルは、老朽化のために安全面からも建て替えの必要がある状況でした。ビルのオーナーは、本件ビルの周辺の「再開発計画」を具体的に計画し推進しており、この計画を実現するためには、本件建物の取り壊しが必要でした。「建替えの必要性」と、「オーナーの再開発の利益」は完全に一致する状況だったことも重視されました。逆に、賃貸人側の「再開発計画」が具体性を有するするものでない場合には、、立退きすら認められない場合もあります。③ 契約期間は短く、代替物件を見つけることも容易だったことネイルサロン店のオーナーは、本件ビルのテナントを約6年ほど使っておりました。他の事案に比べてそれほど長いとは言えない事例でした。逆に、長年の営業の基盤にしていた場合などには、立退料を高額にする事情として使うことができます。また、渋谷区という土地柄やネイルサロンという業態的には、ネイルサロンをするための代替物件を見つけることもそれほど難しくはありませんでした。逆に、代替困難な事情があれば、立退料を高額にするような事情として使うことができます賃借人側に有利な事情としては、次のことが挙げられます。④ ネイルサロンを開業するにあたって、多額の設備投資をしたし、店舗を移転させるためには、店を閉めなければならず休業損害も多額であることネイルサロンのオーナーとしては、ネイルサロンを開店するにあたり、約450万円程度の内装費用をかけて工事をしておりました。このうち、移転後も使用可な物もありましたが、その費用を除いたとしても約250万円ほどの持ち出しが生じます。これも立退料に計上されました。また、新しい店舗に移転するためには、営業ができなくなる期間があるとして、約150万円の休業補償が計上されました。これらに、借家権価額約470万円などを加えて、第1審の裁判において、870万円の立退料が認められました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

本件において、立退料の算定にあたり、判断要素となったのは、(1)店舗の開店時の設備投資と(2)休業損害でした。このことから、内装等の設備投資にたくさん費用を投じ、売り上げが大きく、移転に時間がかかる店舗ほど立退料が高額になることが理解できると思います。立退料の算定においては、立退きによりどの程度損するのか、ということがポイントになってきます。その点を合理的に主張・立証できるかが弁護士の腕の見せ所と言うことになると思われます。