この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
タクシー運転手のご依頼者で,労働時間に対して賃金が安いので,最低賃金を下回っているのではないかという相談です。タクシー運転手の客待ち時間が労働時間といえるのか,労働時間をどのようにして立証するのかが争点となりました。
解決への流れ
タクシー運転手は,タクシー乗車前後にアルコールの呼気検査をしており,その検査結果に時間が記載されていました。また,タクシー運転手は,毎日運転日報を作成しており,その運転日報にも時間が記載されていました。そこで,証拠保全の申立てを行い,アルコール呼気検査及び運転日報を証拠保全しました。その後,証拠保全で入手したアルコール呼気検査及び運転日報を基に,労働時間を算出し,時給を計算したところ,最低賃金を下回っていたことから,最低賃金との差額を請求する労働審判を申立てました。
アルコール呼気検査は,機械的に時間が記載されているので,有力な客観証拠として,労働時間の立証に役立ちました。タクシー運転手の客待ち時間ですが,タクシー運転手は,客待ち時間中に営業所からの無線で指示を受けて,お客様のもとへ向かわなければならないことから,タクシー運転手の客待ち時間は,労働からの解放が保障されておらず,使用者の指揮命令下におかれていたとして労働時間に該当します。労働審判では,当方の主張が概ね認められ,調停が成立しました。タクシー運転手は,深夜の時間帯に働くこともあり,残業代が適切に支払われておらず,最低賃金を下回る賃金で働かされている可能性があります。証拠保全をして,労働時間の立証を丁寧に行えば,最低賃金との差額を請求することができる可能性があります。