10270.jpg
「海獣の子供」アニメ制作会社の社員、未払い残業代求めて提訴「やりがい搾取、ごまかされないで」
2019年10月18日 16時02分

劇場アニメ『海獣の子供』などで知られるアニメ制作会社、「STUDIO4℃」(スタジオよんどしい・東京都武蔵野市)で制作進行を担当していた男性社員(25)が、会社を相手取り、未払い残業代など計約535万円の支払いをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。

提訴日は10月10日付。男性本人と代理人弁護士らが10月18日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。男性は会見で、「残業代未払いと長時間労働は、1社だけの問題だけでなく、アニメ業界で当たり前のように横行している」とうったえた。

劇場アニメ『海獣の子供』などで知られるアニメ制作会社、「STUDIO4℃」(スタジオよんどしい・東京都武蔵野市)で制作進行を担当していた男性社員(25)が、会社を相手取り、未払い残業代など計約535万円の支払いをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。

提訴日は10月10日付。男性本人と代理人弁護士らが10月18日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。男性は会見で、「残業代未払いと長時間労働は、1社だけの問題だけでなく、アニメ業界で当たり前のように横行している」とうったえた。

●『海獣の子供』の制作進行を担当していた

訴状などによると、男性は2016年4月、「STUDIO4℃」に正社員として入社して、2019年5月まで、米アカデミー賞のノミネート対象となっている『海獣の子供』(2019年6月公開)のスケジュールやスタッフ、作画を管理する制作進行を主に担当していた。

裁量のある働き方でないにもかかわらず、専門業務型の裁量労働制が適用されるなどして、月最大103時間(2019年3月)の長時間労働を強いられていたという。

三鷹労働基準監督署が今年6月、会社に対して是正勧告をおこなったが、会社側は、タイムカードに記載された時間は「実労働時間ではない」と主張して、未払い残業代の支払いを拒否している。

こうした状況を受けて、男性は、個人加盟の労働組合「総合サポートユニオン」に入って、団体交渉をつづけてきたが、会社側が一方的に打ち切るなど、交渉ができなくなっているため、今回の提訴に踏み切った。

●「隣の同僚が明日死んじゃうんじゃないか、という不安がある」

男性側は、(1)そもそもアニメの制作進行は、専門業務型の裁量労働制に該当しない、(2)仮に専門業務型の裁量労働制は適用されていたとしても、法律にもとづく手続きがされていなかった(3)いずれにせよ、実際の業務で裁量のある働き方でなかったーーと主張している。

男性は会見で次のように話していた。

「自分が担当しているアニメーターのほうが何倍も長時間労働になっている。作品が終わるころには、本当に死んじゃうんじゃないかと不安になる。正直、アニメ業界で働いていると、隣の同僚が明日死んじゃうんじゃないか、という不安がある」

「アニメ業界ではたらく人間は、アニメや映画が好きだったりする。残業代がでなくても魅力的な仕事だと感じることがある。しかし、それではダメで、『やりがいの搾取』みたいなものになってしまう。魅力的な仕事ということでごまかされてはいけない」

●「訴状が届いていない」

STUDIO4℃は、弁護士ドットコムニュースの電話取材に「訴状が届いていないのでわからない」とした。

●アニメ・クリエイティヴ業界の違法な裁量労働制に、訴訟でルールをつくりたい!

なお、労働組合「総合サポートユニオン」は同日、アニメ業界の労働環境を改善しようと、次のようなクラウドファンディングをスタートさせた。 https:/camp-fire.jp/projects/view/202047

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る