この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
資産家であった依頼者様の父(会社株式、軍用地、事業用ビル等所有)が亡くなり、その遺産分割も終わっていたのに、妹から「最近になって、父の遺言が見つかったから、遺産分割は無効」として裁判を起こされました。
解決への流れ
依頼者様のお父様は、脳梗塞を患い晩年は認知症になっていたため、依頼者様は、遺言は意思能力がない中で作られたものとのご主張でした。ただし、認知能力の程度(軽度・中度・重度)を直接示す診断書はありませんでした。
本件は、認知症を患っていたこと、生活能力や見当識(時間、場所などを認識する能力)の低下が著しいことは、依頼者様からのお話から把握できましたが、肝心の遺言作成当時の診断書はありませんでした。遺言の作成には、法律上、遺言能力(意思能力)と言って、遺言の内容を理解して分配する能力が必要であり、遺言能力の有無を判断する最も重要な証拠は診断書です。しかしながら、診断書がない以上、他の証拠や被相続人(父)の性格、相続への考え方等を詳細に主張して、遺言の内容が不合理であることを立証する必要があります。具体的には、デイサービスや入院をした際の看護記録、自宅でのヘルパーさんの証言、公正証書作成に関与した司法書士の証言、依頼者本人の陳述など様々な証拠を用意して詳細に主張を展開しました。証拠の数、関係者の数、資産の数・金額も非常に多かったことから、裁判の終盤に提出した総まとめの書面は、実に70ページ以上に及ぶものでした。こうした具体的・詳細な主張の結果、判決では遺言無効の主張が受け入れられ、遺産分割協議書に従った遺産の分割を行うことが出来ました。公正証書遺言は、公証人の面前で作成するため、一般に信用性が高いと言われており、無効とすることは簡単ではありません。それでも、直接、認知能力を示す診断書がない中での無効判決を得ることが出来たのは、依頼者様との信頼関係のもと、最後まで全力を尽くしたことにあると考えております。